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2020.12.07
相続税の納税額に多大な影響を与えるのが「小規模宅地等の特例」適用による宅地の課税価格の減額ですが、特に被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に適用される「特定居住用宅地等」に係るミスが種々起こっているようです。
◆ 遺留分侵害額請求で金銭に代えて宅地を移転!
民法の改正により、令和元年7月から「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」に変わっています。相続後に遺留分侵害額の請求がなされ、金銭の支払いに代えて相続した宅地の移転が行われた場合、代物弁済で行われたものと考えます。そうすると、請求権者が取得する宅地は相続又は遺贈によって取得したものではないことになり、小規模宅地等の特例の適用対象とすることはできなくなります。
このケースでは、相続税の申告期限後に移転させる等、当初遺贈で取得した者が要件を満たせば特例は適用できるので、調停の中で相続税の特例の適用まで念頭に置いた協議が行われるべきでしょう。
◆ 小規模宅地等の特例の適用で不利選択・・・!
小規模宅地等の特例は、「被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等」について、特定事業用、貸付事業用、特定居住用などの区分ごとに、適用限度面積や減額される割合が異なります。
従って、相続時の状況や取得者等の要件を確認することで、適用できる宅地等に複数の選択肢がある場合には、どの物件から優先して適用するかにより有利不利が生じます。
しかし、相続税の申告書を提出した後で、例えば修正申告書を提出する時にも、特例を適用する宅地等の選択替えは原則認められていません。
◆ 海外居住者の「家なき子」判定に注意・・・!
特定居住用宅地等では、相続人に配偶者や同居法定相続人がいない場合には、①相続開始前3年以内に、自己又はその配偶者、その3親等内の親族又は特別の関係がある法人が所有する家屋(被相続人の居住用家屋は除く)に居住したことがなく、かつ、②相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない者が特例を適用する場合の候補に上がります。(業界用語では「(新)家なき子」とも言います)
最近は海外で暮らす相続人がいるケースも増えており、海外に居住する相続人が海外で自宅を所有している場合にも、注意が必要です。
家なき子に該当するかどうかで、①の要件の家屋の判定は日本国内に限定されますが、②の要件では日本国内に限定していません。逆に、②の要件では自己のみの(所有)判定となり、その配偶者や親族が所有する場合は不問です。
◆ 老人ホーム入所後の自宅では要注意・・・!
特定居住用宅地等では、老人ホーム等に入所した場合でも、①要介護か要支援認定を受け、②入所施設が一定の老人介護施設で、③入所後にその家屋が事業の用(貸付けも含む)又は入所前から引き続き居住している生計一親族以外の者の居住の用に供されていない場合には、従前の自宅敷地は小規模宅地等の特例適用の対象となります。
入所後に他の親族が入居しているケースでは③の要件を満たさず、特例の適用対象とはなりませんので注意が必要です。なお、①の要件は相続時点で要支援認定の申請中であればOKです。
◆ 老人ホーム入所後に相続した宅地等で特例は?
老人ホーム入居中に自宅を相続した方が、その自宅に戻ることなく老人ホームで死去した場合について、所有権が自分の名義になってから一度も住んでいない状態で死去した場合でも、小規模宅地等の特例が適用できるのかどうかについて、国税庁が文書回答事例で「特例適用可能」と公表しています。
特定居住用宅地等となるためには、その宅地等が相続開始の直前まで被相続人の居住の用に供されている必要があります。しかし、被相続人が要介護認定等を受け有料老人ホームに入居していた場合には、その入居の直前まで居住の用に供されていた宅地等にも、特例の適用を受けることができるとされています。(その他の要件にも注意は必要…)
この回答事例によると、入居直前に居住の用に供していればよく、自身が所有していたか否かについては、法令上特段の規定は設けられていない(ので所有の有無は問わない)と回答しています。
◆ 特例適用となる建物は生計別親族所有でもOk!
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、「被相続人とその生計一親族の居住の用に供されていた宅地等」が対象となりますが、その家屋については、被相続人の所有以外でも、被相続人の親族(配偶者、6親等内血族及び3親等内姻族)の所有なら問題ありません。(地代も家賃も無償借り受けが条件…)