2026.02.25
令和7年12月に公表された令和8年度税制改正大綱では、資産課税分野において「貸付用不動産」および「不動産小口化商品」の評価方法の見直しが盛り込まれました。
相続税の申告実務、とりわけ不動産活用を前提とした生前対策に与える影響は小さくありません。
◆ なぜ今、見直しが必要なのか・・・!
令和7年11月の政府税制調査会の専門家会合に、国税庁より「財産評価を巡る諸問題」と題する資料が提出されました。資料では、令和4年の最高裁判決等を契機として発出された令和6年のいわゆる「マンション通達」の適用対象外となる、一棟所有の賃貸用マンション等を利用したスキームが現在も散見されること、またその都度、個別に対応せざるを得ない状況が生じていることが問題として示されています。
掲載事例では、相続開始前に一棟賃貸マンションの“駆け込み取得”が行われたケースが紹介されています。被相続人は主宰法人からの借入れにより21億円で一棟賃貸マンションを購入し、約3年後に死亡した際には、相続税評価額(通達評価額)が4.2億円にとどまり、いわゆる乖離率は約5倍となっていました。その結果、相続税が約8億円減額となる申告が行われていたとされています。
◆ 改正内容の骨子(貸付用不動産)・・・!
大綱に掲げられた改正内容案は次のとおりです。
(1)対象不動産・・・被相続人等が、相続・贈与の課税時期前5年以内に、対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産。
(2)評価方法・・・課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
ただし、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に、地価変動等を考慮して計算した価額の80/100に相当する金額により評価することができることとする。
(3)適用時期・・・令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価に適用する。
(4)適用除外・・・通達に定める日までに被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む)には適用しない。
◆ 実務への影響と注意点・・・!?
区分所有建物については、令和6年1月からいわゆる「マンション通達」が適用され、一般住宅等との比較により、時価の6割水準を目安として評価額の是正が図られました。
一方で、一棟所有の賃貸マンションについては同通達の適用対象外となり、評価上の問題が残っていました。また、前述の「財産評価を巡る諸問題」では、貸付用不動産の市場価格は主に収益性で価値判断が行われるため、賃貸割合が高いほど市場価格が上昇しやすいことが示されています。他方、相続税評価額では借家人の支配権による利用制限等を考慮するため、賃貸割合が高いほど通達評価額が低下しやすく、結果として時価と通達評価額が乖離し得る、との整理がなされています。
このような背景を踏まえ、区分所有建物に限らず貸付用不動産全般について、一定の是正を図る趣旨で通達改正が検討されているものと理解されます。
もっとも現時点では具体的取扱いがなお不明であり、対象範囲、貸家建付地・貸家評価の適用可否、贈与時評価の適用関係、取引相場のない株式を評価する際の純資産価額の算定への影響、適用除外の具体的判定等については、今後の通達改正・解説の公表を待つ必要があります。
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