2025.07.03
建物や土地が共有名義で譲渡される場合には、注意すべき点がいくつかあります。
今回は、国税庁HPや国税内部資料で取り上げている事例をもとに、共有不動産に係る譲渡所得の留意点をご紹介します。
なお、譲渡所得に対する課税は、「資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得とする」ものであり、「他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨」の制度です。
従って、共有不動産についても、土地・建物ごとに、各共有者の取得原因の時期や態様に応じて区分し、概算取得費(譲渡対価の5%)または実額取得費のいずれか有利な方法を選択して、譲渡所得を計算します。
◆ 「建物共有・土地単独」譲渡で居住用特例は・・・?
たとえば、「建物は居住者Aと、当該建物に居住していないBとの共有であり、土地はすべてAの所有である」という場合の譲渡において、居住用財産の譲渡所得に係る3,000万円の特別控除の適用がどのように扱われるかが問題となります。
この場合、居住していないBが所有する建物の持分に対応する土地部分については、特例の適用は難しいと想定されます。
しかし、国税庁HPの質疑応答事例によれば、「(家屋が共有であったとしても)Aが所有する土地は、Aがその全部を居住の用に供している家屋の敷地である」ことから、その土地全体を「居住用家屋の敷地」と認めるのが相当とされています。
従って、家屋(Aの持分)およびその敷地全体について、居住用財産の譲渡所得の特例控除を適用して差し支えないものとされています。
また、上記の事例に関連して、譲渡前に1人暮らしのAが死亡し、その土地および建物のA持分を甲が相続し、結果として建物が甲とBの共有となった場合、いわゆる「空き家特例」に関する取扱いも、昨年末の改訂で国税庁HPに追録されました。
この場合も、甲の所有となった土地について、「被相続人Aがその相続開始の直前において、Aがその全てを居住の用に供している家屋の敷地である」ことから、家屋が(他人との)共有であったとしても、その土地の全部が「被相続人の居住用家屋の敷地の用に供されていた土地」と認めるのが相当とされました。
従って、その他の要件を満たす限り、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)」を土地全てに適用して差し支えないとされました。
通常、土地の利用状況については建物の持分割合ごとに判断されることが多い中、上記の取扱いは実務上も注視すべき重要な点であり、判断に際しては個別具体的な検討が求められます。
◆ 「建物単独・土地共有」譲渡で居住用特例は・・・?
逆に建物は居住者Aの単独所有で、土地がAとBの共有である場合はどうでしょうか。
居住用の3,000万円特別控除では、建物所有者Aの譲渡所得から優先して特別控除を適用し、控除しきれていない額(控除不足額)があれば、Bの譲渡所得から控除できる制度があります。
ただし、この特例には「BがAと同居の生計一親族」であることが要件となるため、Bは要件を満たさず、Aのみが特別控除を受けることができます。
また、A譲渡前に相続が発生した場合の「空き家特例」も、空き家およびその敷地を相続等により取得した個人が対象となるため、甲が建物を単独で相続している以上、Bは適用不可となります。
なお、仮にBの持分は過去にAの配偶者から土地を相続していたとしても、その後もAが居住していたので「空き家」には該当しないことに…。
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2025.07.03
令和7年7月1日に、国税庁HPにて令和7年分の相続税・贈与税の財産評価をする際に使用する路線価が発表されました。
⇒ https://www.rosenka.nta.go.jp/
なお、路線価や固定資産税評価額の推移が見やすい「全国地価マップ」のサイトでは、
相続税路線価等(令和7年分)のサイト掲載は11月下旬に予定されています。
固定資産税路線価等(令和7年度課税分)は、7月下旬に掲載予定です。
⇒ https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal