2023年 8月

  • マンション評価方法見直しか?-R6より-

    2023.08.09

    相続税の課税対象となる土地・建物や有価証券は、相続税法22条で「相続時点での“時価”」が相続税の課税価格となると規定されています。
    ただ、現実に“時価”を評価・計算するのは困難であるため、国は『財産評価基本通達』によって相続・贈与財産の評価基準を定めています。
    しかし、2013年くらいからマンション価格が高騰し、その後マンション人気で区分所有建物の市場での売買価格と通達による通常の評価額との乖離が顕著となっていました。
    そんな中で、生前にタワマンで節税対策をしてきた相続事案が発生すると、当局は財産評価基本通達の「総則6項」を持ち出して、「通常の通達による評価方法を認めない」として訴訟となることが増えて来ていました。
    この“伝家の宝刀”が何度も抜かれるというのは “異常事態”なわけで、昨年12月の税制改正大綱にも「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」という文言が入りました。
    そして、その後有識者会議等での議論も深まり、この度通達改正試案が公表されました。

    ◆ 国税庁発表の「通達改正案」の余波・・・!
    国税庁の資料の統計数値は、平成30年時点で国税庁が行ったサンプル調査によるようです。
    それによると、乖離率(市場価格÷評価額)は一戸建てが平均1.66倍のところ、マンションは2.34倍で、そのうち約65%は評価額が市場価格の半額以下となっていると。
    一戸建ての1.66倍というのは、逆算すると「一戸建ての評価額は市場価格の平均6割」となり、路線価は公示地価の8割程度に設定されているものの、家屋を含め実際に取引される相場を考えると、実態に合っているように思えます。
    乖離の主な要因分析を行った結果、4つの指標(築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度)で補正する方向で評価方法を見直し、「市場価格理論値の60%」以上になるように、相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているものについてのみ、差額を補填するような補正を行うというのです。(具体的方法はこれから…)
    国税庁が公表した資料(見直し案)の中で「令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用する。」という記載が見られます。
    今後、行政手続法に基づく意見公募手続が行われ、その後、年内に通達改正が行われる可能性が高くなってきました。
    最近、雑誌やネット記事でも「マンション年内に駆け込み贈与を」といった見出しを見かけるようになりました。
    タワマンに限らず、マンション(区分所有建物)全部に適用する通達改正になると思われますが、慎重に見守りたいと思います。

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  • 令和6年からの生前贈与!?(R5税制改正)

    2023.08.09

    日本では、相続税の累進負担を回避しようとする行動を抑制するため、贈与税はより累進構造が重くなっていることが、相続税や贈与税の租税回避行為が拡大している一因であると分析されています。
    そして、高齢者層に資産が集中し、若年層への資産移転が進みにくくなっていて、今までも「相続税と贈与税の一体化」が議論され、「資産移転の時期の選択に、より中立的な税制の構築等」が求められてきました。
    そこで、令和5年度税制改正で『相続時精算課税』などの見直しがなされました。
    また、マンションを利用した過度な節税策も議論が本格化し(日経新聞でも紹介、後日詳解…)、来年からの生前贈与は大きく変わろうとしています。

    ◆ “相続時精算課税”の使い勝手向上はかられ・・・!
    このような観点から、「資産移転の時期に中立的である」といわれる相続時精算課税の使い勝手の向上がはかられました。
    相続時精算課税の制度の特徴は―――
    【1】適用できるのは、その年1月1日現在60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対する贈与です。
    【2】 この制度を選択した年以降の贈与財産の合計が累積で2,500万円を超えるまで贈与税は課されず、超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。
    【3】 贈与者が亡くなった時にその累積贈与財産を相続財産に合算した金額を基に相続税を計算し、既に納めたその贈与税は控除されます。(孫などの受贈財産は2割加算の対象に…。納付した贈与税の方が多ければ相続税は還付になることもあります。)
    これに対し、相続時精算課税制度のデメリットとしては―――
    (1)手続きに期限があり、以降の贈与についてもすべて申告義務があり(期限後申告では 2,500万円の特別控除枠は使えません…)
    (2)いったんこの制度を選択すると『暦年課税』へ変更(戻すこと)はできず暦年課税の基礎控除(年間110万円)も無くなります。
    (3)不動産贈与では、相続ではかからない不動産取得税がかかる場合があり、登録免許税も若干高くなります。
    (4)相続税の申告時に加算するのは贈与時の価額のため、価格が下落しても、財産が滅失しても、贈与時に申告した額を相続税の課税対象に加算しなければなりません。
    (5)贈与した財産は、物納に供することも、小規模宅地等の特例や空き家の譲渡所得の特例の適用もできなくなる、などの点が挙げられます。
    今般の改正で、令和6年からは上記(2)と(4)に対して改善がなされます。
    (2)については、相続時精算課税においても年110万円の基礎控除が創設され(年110万円以内なら申告は不要、期間に関係なく持ち戻しも不要…)(4)に対しても、同制度で贈与を受けた土地・建物が災害で一定以上の被害を受けた場合は、相続時に再計算することができるようになります。(令和6年以後の災害被害から適用。株式やその他財産は対象外…)

    ◆「申請手続きのイメージ」は…!?
    法務省のHPで掲載されている「相続土地国庫帰属制度のご案内」等で、手続や審査の流れが公表されています。
    それによると―――
    1. 申請に不安がある場合は事前に法務局(本局)に相談(予約制)
    2. 該当の土地の境界点にポール、プレート、テープ類などを設置
    3. 申請書の提出は土地を管轄する法務局の本局に持参か郵送(共有の場合は共有者全員で)
    4. 申請後に現地調査への同行を求められる場合があり(代理人に依頼可)
    5. 半年から1年程度で承認・不承認(却下)
    ―――が決まります。
    なお、弁護士、司法書士、行政書士は、申請者本人に代わって申請書類の作成を代行できますが、申請書に作成者を記載する必要があります。
    ただし、この場合も申請者は土地の所有者自身になります。
    (未成年後見人や成年後見人等の法定代理人は、代理人の名前で行うことができます。)
    また、事前の測量等は不要(図面の作成は必要)とのことで、農地の申請でも農地法3条1項に基づく農業委員会の許可取得は不要とのこと…。
    なお、審査手数料は、土地1筆当たり14,000円(収入印紙の貼付で納付)です。
    この手数料はいかなる理由があっても返還されません。
    (申請者が亡くなった場合は、相続等があった日から60日以内の手続きで継続審査に…)

    ◆承認後に「負担金」の納付が必要…!
    審査によって承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用として10年分の土地管理費相当額を納める必要があります。
    法務省HPに「負担金の自動計算シート」の掲載がありますが、負担金の通知が到達した翌日から30日以内に納付する必要があります。
    納付した時点で、土地の所有権が国に移転し(登記は国の方で行い)ます。
    負担金の金額の計算例では、市街化区域にある200平方メートルの宅地で約80万円、1,000平方メートルの森林で約26万円が必要になります。
    なお、却下事由や不承認事由が存在する土地について、事実を偽ったり不正な手段によって承認を受けたりしたことが後に判明した場合は、その承認は取り消され、負担金は没収されます。

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  • 東京局管内の相続税の申告割合20%!

    2023.08.09

    平成27年から相続税の基礎控除額の引き下げなどが行われました。
    この影響で、それまで5%台で推移していた全国の相続税申告割合は、一気に10%台に上昇しました。
    令和3年分(令和4年10月までの1年)の申告事績では、死亡者数約144万人に対して、相続税の申告書を提出された方が約17万人。
    相続税の申告割合は11.8%(東京国税局管内にしぼった場合の申告割合は19.6%)でした。
    令和3年の相続税の税収は2.4兆円で、被相続人1人あたりの税額は1,819万円だそうです。

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