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2024.06.10
居住用不動産で、老人ホーム等入居後によく問題となる「特例」は―――
「A 居住用財産譲渡の3,000万円特別控除」
⇒ 生前にその不動産を売却する場合の譲渡所得
「B 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」
⇒ 老人ホーム等入居中に相続が発生した場合の相続税
「C 被相続人の居住用財産譲渡の空き家特例」
⇒ 相続発生後に相続人が物件を売却する際の譲渡所得
―――の3つがあります。
他の要件を満たしているという前提で、老人ホーム等に入居した場合の注意点を見てみましょう。
◆不動産所有者が老人ホーム等に入居した場合…?
老人ホーム等に入居すると、一般的には「住所(生活の本拠)」が移転することになり、住民票を移すか否かにかかわらず、それ以降、税務上は自宅は本人の居住の用に供してはいないこととなります。
そうすると、「A」の特例を適用するのには、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
(家屋を取壊した場合は取壊しから1年以内に契約し、貸駐車場など他の用に供していないなど条件あり…。)
また、「B」の特例については、税制改正により平成26年以降は、要介護認定等を受けており、かつ、老人ホーム等への入居後に、自宅を貸付けたり、(その時の生計一親族以外の)別生計の親族を含む他の者の居住の用に供していなければ、特例は適用できることになりました。
なお、配偶者や同居・生計一の親族が自宅に残って住んでいる場合は、もともとが(別の規定で)「B」の特例は適用できます。
更に、「C」の特例については、税制改正により平成31年4月1日以後の譲渡から、要介護認定等を受けているなど一定の要件のもと、施設入居後に空き家となった自宅についても、この特例を適用できることとなりました。
◆老人ホーム入居中の配偶者が相続した場合…?
「A」の特例を適用するためには、明文規定は無いものの平成元年3月28日の最高裁判決で、(特例を適用するためには)「所有者として居住の用に供していたこと」も求められ、その取扱いが国税庁HPの『質疑応答事例』でも掲載されました。
従って、この自宅を相続する時点で既に配偶者が老人ホーム等に入居していた場合は、相続した配偶者がその後、生前にこの自宅を売却する際に「A」の特例は適用できないとされています。
また、「A」の条文が租税特別措置法35条にあり、それと同じ条文の中にある「C」も上記取扱いと同様と解されるため、老人ホーム等に入居中の「所有者として居住の用に供したことがない」その配偶者から相続した場合のその相続人も、「C」の特例を適用することはできないと解されます。
(ただし、先の最高裁判決では反対意見もあり、主旨からも法改正が待ち望まれます。)
ところが、相続税における「B」の特例では、当初の不動産所有者だけでなく、老人ホーム等に入居しながらその物件を相続したその配偶者についても、要介護認定等を受けていて、取得後に自宅を貸付けその他の用に供していなければ適用は可能だとしています。
東京局HP掲載の『文書回答事例』でも、「被相続人が有料老人ホーム等に入居等して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判定することとされていますが、その時において被相続人が宅地等を所有していたか否かについては、法令上特段の規定は設けられていません。したがって…」としています。
(家なき子等の相続人の要件等が別途あります…。)
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