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  • “相続税対策”以外の“生前対策”

    2017.08.21

    相続対策(生前対策)には、相続税軽減対策(節税対策)、納税資金対策、争族対策(分割対策)、安心老後対策(認知症対策)があります。今回は、争族対策(分割対策)と安心老後対策(認知症対策)について記載します。

    ◆ 争族を避けるための『分割対策』・・・

    「相続」ならぬ「争続(争う相続)」や「争族(争う家族)」という言葉をよく目にするようになりました。家族が争わないで済むように“分割対策”をすることは、相続税の有無にかかわらず大切なことです。というのは、調停などの成立件数を遺産の規模別に見ると、遺産の金額が5千万円以下のケースが全体の34近くを占めているというデータ(司法統計)もあり、遺産分割について揉めるのは金額の大小に関係ない、という現実があるからです。

    円滑・円満な遺産分割をするためには、相続人同士の相互理解とコミュニケーションが大切です。しかし、それが取れていても何かことがあると揉めてしまうのが相続です。それを予防するためには──

    ①『遺言書』

    遺言書がなく、遺産分割が話合いで決まらないため裁判所にまで行くと、最終的には民法の法定相続分を基本とした決着が図られることが多いようです。従って、遺産を残す立場として法定相続分によらない相続をイメージしている場合は、やはり遺言書を作成しておくべきでしょう。それも、時間的余裕があるならば公正証書遺言にすべきで、通常10万円前後で作成できます。

    ②『分割しやすい財産の形成』

    相続を想定し、事前に分割しやすい財産構成にしておきます。同族会社への貸付金で回収できないものがある場合は、タイミングをみて権利放棄をしたり、借入金や保証債務などについても整理しておく必要があります。また、祭祀財産の承継も問題になるので、お墓の事前準備も良いでしょう。

    ③『生命保険』

    生命保険の死亡保険金は、遺産分割協議の対象とはならず、指定された受取人固有の財産として、相続後すぐに現金を入手できるメリットがあります。

    ④『生前贈与』

    生前に前もって渡したい人に渡せるのが生前贈与ですが、受贈者単位で年110万円を超えると贈与税がかかります。“相続時精算課税制度”を選択し、大きな金額でも税負担ゼロあるいは低い税率で生前に贈与することは可能です。(相続税の計算上は相続財産に加算…)ただし、相続時には、既に贈与されたものは遺産分割の対象にはなりませんが、“特別受益”として遺産に“持ち戻し”て計算することが求められる可能性があります。

    ⑤『遺留分の事前放棄』や『遺留分に関する民法の特例(除外合意)』

    遺留分を侵害する遺言書は、相続開始後、遺留分減殺請求を受け相続人間でトラブルとなることがあります。これに対しては、相当額の生前贈与をすることと引き換えに、自分の遺留分を放棄させることで、相続紛争を防止できる『遺留分の事前放棄』という方法があります。また、中小企業の事業承継を円滑に行うために、自社株式の分散を防ぎ、後継者にスムーズに事業を承継するための『遺留分に関する民法特例(除外合意)』などもあります。税制でも、「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」等があり、利用しやすくするよう毎年のように改正を重ねています。

    ◆ 老後に備えて何をするか?『安心老後対策』・・・

    相続税対策や分割対策は、いわば死亡後の対策であって、実はそれ以上に自身にとって重要な対策があります。これから先、安心して老後を過ごすために、自分自身や家族の生活・財産をいかに守って行くか…。そのための「安心老後対策」について、いくつか見てみましょう。

    (1)『遺言書』

    分割対策にもありましたが、安心して老後を過ごすためにも遺言書は有効です。(内容を家族に知らせないとしても)遺言書が書かれたと知ることで、承継者が安心して事業に専念することができるなど、家族間のバランスが保たれ、協力関係がスムーズになるケースがあるからです。遺言書は、公正証書遺言であっても何度でも書き直すことができます。その時の感情ですぐに書き直すのは避けるべきですが、遺言書を作成する過程で財産を見直し、相続させる者や付言事項(遺言書の中で法的拘束力のない自由に気持ちなどを書き記す部分)を検討する必要があり、自身の想いを乗せ、家族への感謝の念を新たにするには、よい機会だと思われます。

    (2)『エンディングノート』

    自分の終末期に向けて自身と家族に残しておくメッセージを記したノートです。自分の人生を振り返り、希望通りに最後まで人生をまっとうするために記しておきます。内容としては、『自分について』では「これからやりたいこと」等を、『家族について』、『療養・介護について』では「終末期医療についての希望」等を、『後見について』、『葬儀について』、『供養や仏壇について』、『財産について』、『相続について』等、自由に記入します。なお、遺言書とは異なり法的な効力は有しないので、財産を誰に相続して欲しいかについて書くと、トラブルになる場合も…。

    (3)『財産の安全運用』

    老後の資産(投資・不動産等)を安全に管理・運用するために、思いやりのあるサービスと、コミュニケーションが取れる環境(業者・契約等)が必要です。

    (4)『任意後見制度』

    将来、後見が必要となってから家庭裁判所に選任の申し立てをする“法定後見制度”のもとでは、通常外部の専門家が指定され、被後見人の家族とのコミュニケーションが取りづらいなどの問題が生じかねません。判断能力が不十分となる前に、「誰を後見人にするか」「与える権限は」を自分の意思であらかじめ決めることができる制度です。

    (5)『信託制度』

    老後の財産管理への対処法として“家族信託”が最近注目されています。実行するには専門家のサポートが必要で費用がかかることではありますが、「成年後見の代用」として、また「判断能力が不十分となった時の資産凍結(契約変更、処分等不能)を回避するため」に利用され始めています。

    (6)『リフォーム』

    住みなれた自宅に住み続けるには、バリアフリーや介護に対するリフォーム工事が必要な場合があります。税制上は、バリアフリー改修工事をした場合には、住宅ローンを組まなくても「住宅特定改修特別税額控除」の制度により、所得税の確定申告で改修工事の標準的な費用の額(最高200万円)の10%の税額控除を受けることができます。

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