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2021.09.13
消費税は、価格への転嫁を前提とする税法なので、相続人の消費税の納税義務判定では、相続によって突然事業を承継することになる者への配慮があります。
つまり、事業者でなかった相続人や免税事業者の相続人が、被相続人(亡くなられた方)の事業を承継した場合の消費税の納税義務者判定は、次のようになります。
◆ 相続で事業を承継する相続人の判定は・・・?
(1) 相続があった年は…
相続があった年の基準期間(2年前)における被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の消費税の納税義務は免除されません。
上記が1,000万円以下であれば、(免税事業者の)相続人の同期間の売上等を考慮することなく、相続があった年の消費税の納税義務は免除されます。
ただし、ここで言う「相続で事業を承継」する者には、相続人が1人だったり、包括遺贈で事業の全部又は一部を承継する場合を言います。
遺言者が財産を具体的に指定して渡す特定遺贈(死因贈与も)で受け取ったり、共同相続人間で分割協議を行う場合は、次項「◆ 未分割・特定遺贈の場合の納税義務の判定は?」によります。((2)も同様…)
(2) 相続があった年の翌年又は翌々年は…?
相続があった年とは異なり、相続があった翌年又は翌々年では、それぞれの基準期間における課税売上高は、被相続人だけではなく相続人との合計額で1,000万円を超えるかどうかを判定します。
◆ 未分割・特定遺贈の場合の納税義務の判定は?
2人以上の相続人があるときは、相続財産の分割が実行されるまでの間は、被相続人の基準期間の課税売上高を、民法上の法定相続分に応じた割合で相続人に按分して、相続人ごとに検討します。
ただし、分割によって年の途中から課税事業者に切り替わることはなく、その前年の12月31日の現況で未分割であれば、遺産分割が行われた年については、法定相続分に応じた割合で按分する扱いが認められます。
また、特定遺贈や死因贈与で事業を承継する場合や、相続人の一人が事実上承継した場合であっても、上記の未分割(共同相続)と同様に取扱われます。
これは、消費税法上の“相続” は、条文上“包括遺贈”を含むと規定されているも、その反対解釈から特定遺贈や死因贈与は「相続で事業を承継」に当たらないと解されるからです。
なお、遺産分割などで承継が決まった翌年については、相続人が相続した事業場(相続物件)に係る売上の金額で検討することになります。
◆ その他の注意点は・・・?
(a) 課税事業者となった場合は…?
基準期間の課税売上高が1,000万円超となった人は、「消費税課税事業者届出書」と「相続・合併・分割があったことにより課税事業者となる場合の付表」を速やかに提出します。
(b) 被相続人が出していた届出書の効力は…?
被相続人が提出していた「簡易課税制度選択届出書」は、相続人には引き継がれません。
課税事業者の選択や課税期間の短縮についても同様です。
そのため、相続によってはじめて事業を営むことになった相続人は、相続のあった年の12月31日までに手続きをすれば簡易課税制度を選択できます。(それ以外でも被相続人が簡易課税を選択していれば同様)
なお、相続人の簡易課税の選択に関して、被相続人の(生前の)課税売上高は5,000万円基準の判定に影響は与えません。