2025.08.08
相続税の各種特例の中でも、適用の有無によって納税額に大きな影響を及ぼすのが『小規模宅地等の特例』です。
中でも、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等について、330平米までの部分について80%の評価減が認められる『特定居住用宅地等』は、その代表格といえます。
そして、同居していなかった相続人等であっても、一定の要件を満たせば適用可能となる場合があり、それが業界用語として「家なき子」特例と呼ばれています。
◆特例の適用対象となる「居宅の範囲」は・・・?
対象となるのは、被相続人の自宅建物の敷地であり、庭や家庭菜園、隣接する自宅駐車場など、一体として利用していた範囲まで(地番の筆には関係なく)含めることができます。
ただし、区分所有建物の場合には、原則として登記単位で別棟とみなされる点に注意が必要です。
また、被相続人が生前に老人ホーム等へ入所していた場合には、相続開始の直前に要介護または要支援の認定(申請中でも可)を受けていることが要件とされます。
このとき、施設入所後に生計を別にする親族が旧宅に転居してきた場合などでは、原則として特例の適用は認められなくなってしまいます。
さらに、被相続人が一人暮らしを避けるため別居の親族のもとへ転居し、その後相続が発生した場合には、(事実認定の問題として)生活の本拠を移したとされれば、旧宅敷地に対して特例を適用することはできなくなると考えられます。
◆「家なき子」登場の前提・要件は・・・?
この特例は「被相続人等の生活基盤の維持のために欠くことのできない」居宅の敷地に適用されるもので、被相続人に配偶者や同居親族がいる場合には、それ以外の親族が相続しても適用されません。
一方で、配偶者も同居親族もいない場合には、相続後にその不動産を活用する可能性の高い相続人として、一定の要件を満たすいわゆる「家なき子」が、特例の適用対象となります。
つまり―――
(1) 被相続人に配偶者がいない
(2) 相続開始の直前に対象家屋に居住していた他の相続人がいない
(3) 相続開始前3年以内に、取得者自身・その配偶者・3親等内親族、あるいは特別の関係のある法人(株式50%超を保有等)が所有する家屋(対象家屋は除く)に居住したことがない
(4) 自身が現在居住している家屋を過去に所有したことがない
(5) 対象となる宅地等を相続税の申告期限まで所有している
―――ことが要件とされます。
◆要件の精査と留意点・・・!?
まず、取得者は法定相続人(代襲相続人や養子)のほか、遺言で遺贈を受けた受遺者(包括受遺者、特定受遺者)が含まれます。
したがって、孫なども対象となる可能性があり、「家なき子」という呼称は、むしろ「家なき親族」と表現すべきかもしれません。(2割加算の対象にはなりますが…)
また、(3)や(4)で問題となるのは「家屋」であることに注意が必要で、逆に(5)の所有継続要件では「宅地等」の所有が求められ、建物部分は申告期限前に取壊していても差し支えありません。
なお、(5)における所有要件に関しては、相続税の申告期限前に売却活動を開始することは可能ですが、所有権の移転は申告期限後である必要があります。
売買契約の締結時点を所有権移転の時期とみる見解もありますが、契約書において所有権移転の時期を明記(申告期限後となるよう設定)し、残代金支払いと引換えに所有権を移転すれば、要件を満たすと解される余地はあります。
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