法人成りメリット
『個人事業者は法人成りした方が有利?』と聞かれますが、これは一概に言えることではありません。法人成りして商売をする場合の、メリット・デメリット(注意点)を一般論としてよく理解し、自分のケースに置き換えて慎重に考える必要があります。
法人成りした場合のメリット
営業戦略上
- 対外的信用の増大
- 物心両面での家計との分離
- 経営者・従業員の意識改革
- 従業員の採用、定着率の向上
税務戦略上(法人税、所得税等)
事業所得から給与所得への転換による税の軽減……
個人事業者として、事業(又は不動産)所得として所得税が課税されていたものが、役員報酬となり給与所得として所得税が課税されることになります。役員報酬になった部分については、事業税を払う必要はなくなります。そして、給与所得には給与所得控除があり、年収300万円で182万円に、600万円で426万円に、1,000万円では780万円に所得が軽減されます。
(但し、平成18年度税制改正により、オーナー色の強い一定の同族会社の経営者に対する給与のうち、給与所得控除に相当する額について、法人の損金の額に算入されないという制度ができました。従って、一定の同族会社に該当する場合には、これまでのように給与所得控除の利用による節税効果がなくなりました。)![]()
家族給与(所得分散)による税の軽減……
個人事業者の場合、配偶者を含め扶養家族に給与を支払う場合、専従者給与として金額に上限があったり、事前に届出なければなりません。さらに、1円でも給与を支給すると、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。しかし、法人では家族が事業を手伝った分だけ家族に給与を払っても、それが一定金額であれば、配偶者や扶養親族として控除の対象とすることができます。
赤字繰越しによる税負担の軽減……
個人事業者では、損失は3年繰り越せますが、法人では7年間繰り越せます。
切り捨て所得控除の減少による税の軽減……
個人事業者の所得が赤字になったときは、その年の所得控除を結果的に全額放棄することになってしまいますが、法人の場合は役員報酬や給与を平準化してもらうことができ、所得控除を無駄なく使うことができます。また、所得税は累進税率になっていますので、年によって事業所得にばらつきがある場合は、給与所得の平準化によって相対的に低い率の税率が適用になるというメリットがあります。
生命保険の経費化による税の軽減……
個人事業者の場合、所得控除で認められる以外、事業主の生命保険料を経費とすることは出来ません。しかし、法人では契約関係に気を付ければ、代表者のみにでも保険をかけて損金処理が可能であり、退職金の原資や、万が一の時の事業資金、遺族保証、入院費用等とすることもできます。
退職金支給による税の軽減……
個人事業主が引退した場合や、死亡した場合には、自分や遺族に退職金を支払うことは出来ませんが、法人であれば可能です。しかも、勤続年数に応じた一定額まで所得税は非課税ですし、死亡退職金は相続税法上も非課税枠があります。
決算期を自由に選べる……
個人事業者は、12月31日と決められていますが、法人では決算期を選ぶことができます。繁忙期や棚卸、行事等を考えて、自分に都合の良い時期を、決算期として自由に選ぶことができます。
規程旅費による税の軽減……
出張旅費については、基本的に実費を、経費ないし損金に計上することができます。しかし、法人の場合、適正水準の旅費規程を設ければ、たとえ代表者であっても交通費の他に旅費日当を非課税で支給することも可能です。
社宅等を利用した一部生活費の経費化……
経営者の自宅でも、法人名義で購入・借入れし、経営者に社宅として賃貸することは可能です。居住用の部分については、通達で規定する家賃をとっていれば問題ありません。
税務戦略上(消費税)
現在、個人として営業活動をし、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超える場合、消費税の課税事業者となります。しかし、法人成りした場合、法人と個人では別の課税主体ですので、営業を法人が引き継いでも、法人の設立後2期は、どんなに売上が多くても免税事業者(資本金1,000万円未満の場合)として消費税の申告義務が免除されます。
税務戦略上(相続税、事業承継等)
細分化された株式等による相続税対策……
株式は細かく分割されているため譲渡や贈与が容易なので、事業承継のタイミングは計りやすくなります。また、相続が起こった場合でも、相続割合に応じた柔軟な遺産分割が可能で名義書換えの手続きの手間や余計な出費を抑えることができます。
自社株評価額の低減による相続税対策……
自社株の評価額を引き下げることで、事業承継がし易くなります。
法人成りした場合のデメリット
事務コストが増大する……
法人成りすると、一時的に事務費が増大するだけでなく、会社を維持・発展させていくために、事務コストは個人時代に比べて増大します。(司法書士報酬・税理士報酬等)
税負担(均等割り)の増大……
赤字法人でも、住民税の均等割(最低7万円)が毎年かかります。
税負担(役員給与の一部損金不算入)の増大……
平成18年度税制改正で登場した「特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度」は、特殊支配同族会社に該当し、基準所得金額による適用除外にあてはまらなければ、代表者給与の給与所得控除相当額だけ損金不算入となります。これは、代表者の役員報酬を支払うと必然的に付いてくるもので、場合によっては個人時代よりも税負担が増える可能性があります。![]()
税務調査に当たる可能性が高まります……
毎年発表される国税庁の資料からも、法人の方が調査に当たる可能性が高い(確率的に高い)のは事実です。
交際費の損金算入額に限度が生じる……
個人事業者では事業に直接関連する交際費であれば、かかった費用だけ必要経費に入れることは可能ですが、法人の場合は、年間400万円(資本金1億円以下)の損金算入限度額があり、それ以下でも10%は損金になりません。
法人の法定福利費の増大……
法人は、法律上はすべて強制適用事業所として、(政府管掌)健康保険及び厚生年金に入らなければなりません。そうなると、事業主負担として、保険料の半額を負担しなければならず、会社の出費が多くなるのは事実で、法定福利費の負担は経営上重要な問題となっています。
法人成りのタイミング
以上のメリット・デメリットを考え、法人として活動するほうがいいと考えたとき、後は法人成りの時期の問題となります。法人成りするタイミングとして、考えなければならない点は、次のとおりです。
- 法人設立費用
- 資本金の準備(出資者を募る場合等)
- 消費税の課税事業者にいつなるか
- 従業員の採用計画
- 事務所、店舗等の移転・賃借予定 (自宅を含む)
- その他事業展開の予定(宣伝広告、営業戦略等)
- 事業承継の必要性、タイミング等







